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経済学部だから学べること

レポート

  • 2014.06.03
  • REPORT

イホール・カバネンコ国防次官と

ウクライナ問題について岡部先生にお話を伺いました

昨年11月から起きた反政府運動以来、大統領解任、ロシアによるクリミア編入※など、騒乱とも危機ともいわれるウクライナ問題。先月25日に行われた大統領選挙で勝利したポロシェンコ氏が7日、正式に就任しますが、東部ではまだ戦闘が続いています。研究のため、大統領選挙の時期に、ウクライナの首都キエフを訪問していた経済学部の岡部芳彦准教授に、現地のお話を伺いしました。

 

-今回の訪問期間は

(岡部) 5月21日から、大統領選の行われた25日までキエフに滞在しました。現地では、イホール・カバネンコ国防次官(海軍大将)やオレクサンドロ・シチ副首相、ユーリ・シロチュク最高会議(国会)議員らと会談し、意見交換しました。ウクライナ正教会・キエフ総主教庁のフィラレート総主教から聖公ウラジーミル勲章をいただいてきました。

 

-先生は経済史がご専門ですが、ロシア、ウクライナとかかわるきっかけは

(岡部) 大学に通っていた1997年、約8か月にわたってモスクワ国立総合大学の国際教育センターに留学しました。「英語以外の外国語をしゃべりたい」というのが動機でした。このセンターはソ連時代のカリキュラムで「1年間でロシア語がしゃべれるようにする」という、スパルタ教育でした。大学の寮に住み、その期間の勉強で、だいたい話せるようになりました。

帰国して約10年間はロシアと縁のない生活で、ロシア語も忘れかけていました。ところが、「ロシア語を勉強してみませんか」と、学部長からキルギス出身の留学生、ワリエワさんを紹介され、月4回ほどワリエワさんからロシア語を学ぶようになりました。ワリエワさんは今春卒業しましたが、今でも毎日のようにスカイプでロシア語の勉強を続けています。ついでに言うと、ウクライナとのかかわりは高校生の時にツアーで行ったのが最初です。崩壊後のソ連を見に行こうという企画でして、その時にモスクワ、サンクトペテルブルク、そしてキエフを訪ねました。

 

-ウクライナ問題の歴史的な背景は非常にわかりづらいのですが、今後はどうなっていくとお思いですか

(岡部) 早く国が安定してほしいと思っています。古い世代はロシア語を話し、「ソ連の時代はよかった」といいますが、ソ連崩壊後、学校教育はすべてウクライナ語ですから、20歳過ぎの若者はウクライナ語を話すし、ウクライナのアイデンティティを持っています。ジェネレーションギャップがなくなれば落ち着くと思います。

実は、今回の大統領選でも東部では妨害が起きたようですが、それでも選挙がこんなにまともに実施されたのは初めてなんです。

 

-先生のウクライナにかかわる活動は、まだ混乱が続くドネツクなどの東部でしたね

(岡部) ドネツクはもともと静かな工業都市なんです。当初は3月ごろに行くつもりで、現地の友人も「ドネツクは大丈夫だよ」と言っていました。それが、こんなことになるとは。私が行いけなかったため、NHKの取材クルーに現地の友人や知人を紹介したり、また彼らの安全を確認してもらいました。

私はウクライナの東部が活動拠点です。一昨年、学内で開催した日本ウクライナ地域済文化フォーラムを見てもお分かりのように、日本とウクライナ、もっと言えば関西とドネツク州の将来を展望する学際フォーラムです。ドネツクで再会する約束をしたのですが、昨日お会いしたウクライナのイホール・ハルチェンコ大使は「9月にぜひドネツクで開催してほしいと思っているが、安全面を考えると公式には推薦できない…」と話していました。早くドネツクに戻れる日が来るといいのですが。

 

-ウクライナ問題だけに限らず、中国と日本、アセアン諸国との現状を見ても、国際政治はめまぐるしく動いています。学生の皆さんに期待することは

(岡部) 日常見ているバラエティ番組や携帯ゲームみたいに、遠い国で起きていることは実は自分の身近なことにも影響しているんだということを知ってほしいですね。日々、気にしながら新聞やニュースに触れてほしいと思います。

 

※クリミア編入

親露派のヤヌコーヴィッチ政権の崩壊により、ロシア上院は3月1日、クリミアへの軍事介入を承認。プーチン大統領は、「クリミア半島内のロシア系住民を保護する」との名目で本格的な軍事介入を始めた。これに対し、ウクライナ新政権と親欧米派の多いウクライナ西側地区の住民は侵略だとして強く反発。欧米諸国も、こうしたロシアの動きは国際法違反の侵略で、ウクライナからのクリミアの独立とロシアへの編入は無効であるとして、ロシアへの制裁を実施している。しかし、今月1日から、クリミアではロシアのルーブルが唯一の通貨となるなど、ロシアによる実行支配が強まっている。

  • シチ副首相と

  • ユーリ・シロチュク最高会議議員と

  • フィラレート総主教から聖公ウラジーミル勲章をいただきました