岡部ゼミ生(左)からのクイズに答えるアナスタシアさん(中央)。右は高見さん
レポート
- 2024.06.24
- REPORT
経済学部の岡部ゼミでウクライナから避難した長崎大学大学院生らが祖国の伝統工芸品を販売する活動を紹介しました
ロシアによる軍事侵攻で戦火の続くウクライナの東部ドニプロから避難した長崎大学大学院生のアナスタシア・ストラシコさん(25)と、株式会社「UA.Designer Japan」を設立して代表取締役を務めている高見翔希さん(27)が6月21日、ポートアイランドキャンパスを訪れ、経済学部の岡部芳彦教授の3年次生ゼミでウクライナ民族伝統の衣装や装飾画を使った雑貨を販売する活動について語りました。
兵庫県出身の高見さんは2018年に長崎大学に入学。在学中の19年からロシアで事業をスタートしたが、軍事侵攻により事業を停止。長崎県の通訳ボランティアに登録し、アナスタシアさんらウクライナの学生と知り合いました。一方、アナスタシアさんは難関のキーウ国立大学で日本語・日本文化を学び、卒業後はIT会社に勤務していました。軍事侵攻で危険にさらされ、家族でジョージアに避難しましたが、長崎大学が避難者の受け入れ先になっていることを知って単身来日しました。同社のブランドプロデューサーを任され、高見さんと2人でウクライナの作家たちと提携し、作品をネット販売しています。
販売しているのは民族独自の精巧な刺繍を施したシャツやブラウスなどの衣装「ヴィシヴァンカ」とユネスコの世界無形文化遺産に登録された色鮮やかな装飾画「ペトリキフカ塗り」の雑貨など。2人は実物を持参してゼミ生に見せてくれました。ペトリキフカ塗りに使う猫の毛の筆も持参、ドニプロ近くのペトラキフカ地域には職人が30人ほどいて、全員が自宅で猫を飼っているという面白い話もありました。ヴィシヴァンカは日本向けにデザインやサイズを変えているといいます。
日本では茶道の師範が、「ペトリキフカ塗りで茶道具を作れるか」とのオファーをくれるなど、協力の輪が広がっていると言います。高見さんは「ロシアの侵攻から2年たち、支援の形も変わってきました。当初は『知ってほしい』でしたが今は『忘れないで』です。誰にでもできる支援は『知ること』です。戦争が始まり、ロシアのものだと思われていたものが実はウクライナのものだと分かったということもあります。ウクライナでも伝統工芸が見直されています」と述べました。
ゼミ生からは「日本では伝統工芸の作り手は減っています。ウクライナでは事情はどうですか」と質問が出ました。2人は「ウクライナでも若者が作るとまではいかなくても、ヴィシヴァンカを知りたい、着たいという人はいます。ジーンズと一緒にヴィシヴァンカを着るなど普通の生活で着るようになっています」と答えました。
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高見さんらの話を聴く岡部ゼミ生
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刺繍の地域性について話す高見さん
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アナスタシアさんらから贈られたヴィシヴァンカのシャツを手にする岡部教授(右)
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アナスタシアさんと高見さんを囲んで記念撮影する岡部ゼミ生
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キャンパスグリーンで記念撮影する岡部ゼミ生