特別講義を行う松澤室長
レポート
- 2024.07.09
- REPORT
楽天ヴィッセル神戸社長室の松澤室長が経済学部の3年次生を対象に特別講義を実施しました
楽天ヴィッセル神戸社長室の松澤拓室長が6月28日に経済学部3年次生約100人を対象に特別講義を行いました。有瀬キャンパスにて行われたこの講義は、「ヴィッセル神戸のデータから読み解く行動経済学」というテーマで行われ、プロサッカーチーム「ヴィッセル神戸」を運営する同社と本学が展開しているパートナーシップ事業の一環として実現しました。
松澤室長はまず、Jリーグの基本的な現状とその構造について説明しました。Jリーグは現在、20チームずつの複数のカテゴリーに分かれ、それぞれのリーグ内で毎年昇格と降格が行われています。1993年の発足当初は10チームしかなかったリーグも、現在は60チームに拡大しました。地域密着型のクラブや親会社がバックアップするクラブがあり、クラブ経営の形態もさまざまです。
次に、ヴィッセル神戸の具体的なデータをもとに講義は進みました。J1リーグのクラブは平均して年間約53億円の売上を上げており、その収入の大部分はスポンサーからの支援やチケット販売、グッズ販売などから得ています。トップの浦和レッズは年間売上が100億円を超えており、選手の人件費に多くを費やしています。高い収入を得るクラブほど強力な選手を獲得しやすく、競争力が高まるサイクルが生まれています。
しかし、海外リーグと比較すると、Jリーグの収入規模はまだまだ小さいそうです。例えば、「イングランドのプレミアリーグは年間売上が1兆円を超えており、その多くは放映権収入によるものです。DAZNとの契約により、Jリーグの放映権収入も増加していますが、プレミアリーグと比べるとその差は大きい」と話していました。
後半は、スポーツイベントにおけるダイナミックプライシング(需要と供給のバランスによって価格が変動する仕組み)の実例と、ファンの満足度の向上に関する施策について話しました。松澤室長は、ヴィッセル神戸の試合を例に、「アンドレス・イニエスタ選手の退団試合やリーグ優勝がかかった最終戦では、チケットは他の試合と比べて非常に高い価格で取引されました。このように、需要が急激に高まる試合やイベントでは、価格が上昇する傾向にあります」と説明しました。
さらに、松澤室長はヴィッセル神戸の重要な試合の直後にハイライト動画や限定商品のプロモーションを行う「利用可能性ヒューリスティック」の活用についても言及。また、試合開始1時間前からイベントを開催し、早めに来場するようファンに促すことで入場時のピークを分散させる取り組みや、スタジアム内にテレビを設置し、飲食物を購入するため待機している時でも試合の様子を観られるようにすることで、待ち時間のストレスを軽減する施策についても紹介しました。
松澤室長は最後に、「自分が学生時代勉強していたこととは全く関係のない人生を20年間過ごしてきました。皆さんも全く関係のない社会や業界に進んだとしても、どこかで必ず繋がってくると思います」と学生たちに語りかけ、自身の経験をもとにキャリアの多様性と意外な結びつきを強調しました。
受講した学生は、「行動経済学についてはゼミで少し触れたことがありましたが、来場者の混雑やその解決策を具体的に説明いただき、とても分かりやすくより深く理解できました」等と感想を述べました。
いち早くスタジアムにキャッシュレス決済やQRチケットを導入したクラブであるヴィッセル神戸が、どのようにそのデータを活用してお客さんの行動を変えているのかを学ぶ貴重な時間となりました。
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特別講義を聴く学生
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学生の質問に答える松澤室長
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松澤室長を囲んで記念撮影を行う学生たち